日本法哲学会では、2008年に刊行された法哲学年報より、会員からの投稿による書評「論争する法哲学」を掲載することとしました。
ご参考までに、担当理事で把握している著作リストを掲載いたします。なお、網羅的なものではありません。会員各位でお気づきの著作がございましたら、事務局<secretariat☆houtetsugaku.org>までお知らせ下さい(メイルアドレスの「☆」は適切な記号に置き換えてください)。
・宇佐美誠・児玉聡・井上彰・松元雅和『正義論 ー ベーシックスからフロンティアまで』(法律文化社、2019年10月)
・栗田佳泰『リベラル・ナショナリズム憲法学』(法律文化社、2020年1月)
・井上達夫『生ける世界の法と哲学-ある反時代的精神の履歴書』(信山社、2020年1月)
・住吉雅美『あぶない法哲学-常識に楯突く思考のレッスン』(講談社現代新書、2020年5月)
・那須耕介・橋本努(編著)『ナッジ!?-自由でおせっかいなリバタリアン・パターナリズム』(勁草書房、2020年5月)
・森村進『法哲学はこんなに面白い』(信山社、2020年6月)
・那須耕介『法の支配と遵法責務』(勁草書房、2020年7月)
・宍戸常寿・大屋雄裕・小塚壮一郎(編著)『AIと社会と法-パラダイムシフトは起きるか?』(有斐閣、2020年8月)
・宇佐美誠(編)『AIで変わる社会と法-近未来を深く考えるために』(岩波書店、2020年9月)
・大江洋『子どもの道徳的・法的地位と正義論-新・子どもの権利論序説』(法律文化社、2020年9月)
・西村清貴『法思想史入門』(成文堂、2020年9月)
・濱真一郎『ハート対ドゥオーキン論争のコンテクスト』(成文堂、2020年10月)
・戒能通弘・神原和宏・鈴木康文『法思想史を読み解く―古典/現代からの接近』(法律文化社、2020年10月)
・那須耕介・平井亮輔(編)『レクチャー法哲学』(法律文化社、2020年10月)
・児玉聡(編)『タバコ吸ってもいいですか―喫煙規制と自由の相克』(信山社、2020年10月)
・毛利透『国家と自由の法理論―熟議の民主政の見地から』(岩波書店、2020年11月)
・小林史明『法と文学―歴史と可能性の探究』(勁草書房、2020年12月)
・浅野幸治『ベジタリアン哲学者の動物倫理入門』(ナカニシヤ出版、2021年2月)
・重松博之『ヘーゲル承認論と法』(成文堂、2021年3月)
・西野基継『尊厳概念の生成と構造』(晃洋書房、2021年3月)
・西島法友『続・ルソーにおける人間と国家』(成文堂、2021年3月)
・林田幸広ほか(編)『作動する法/社会―パラドクスからの展開』(ナカニシヤ出版、2021年3月)
・川瀬貴之『リベラル・ナショナリズムの理論』(法律文化社、2021年3月)
・菊地諒『「法と経済学」の揺籃』(成文堂、2021年3月)
・木原淳『入門 法学読本』(晃洋書房、2021年4月)
・菅原寧格・郭舜(編)『公正な法をめぐる問い』(信山社、2021年4月)
・松元雅和『公共の利益とは何か―公と私をつなぐ政治学』(2021年4月)
以下では、書評の対象作品ごとに、書評・著者による応答・再応答を整理しました。
- 松本和彦『カントの批判的法哲学』(慶應義塾大学出版会2018)
- 高橋洋城「カント『法論』は何を語るのか:近年の研究書に見るカント法・政治哲学研究の現在地」(法哲学年報2020掲載)
- 石田京子『カント 自律と法:理性批判から法哲学へ』(晃洋書房2019)
- 高橋洋城「カント『法論』は何を語るのか:近年の研究書に見るカント法・政治哲学研究の現在地」(法哲学年報2020掲載)
- 網谷壮介『共和制の理念:イマヌエル・カントと18世紀末プロイセンの「理論と実践」論争』(法政大学出版局2018)
- 高橋洋城「カント『法論』は何を語るのか:近年の研究書に見るカント法・政治哲学研究の現在地」(法哲学年報2020掲載)
- 北村幸也『裁判と法律のあいだ:ドイツ憲法の視角から』(成文堂2020)
- 服部寛「書評:北村幸也『裁判と法律のあいだ―ドイツ憲法の視角から―(新基礎法学叢書17)』」(法哲学年報2020掲載)
- 北村幸也「服部寛会員の書評に寄せて」(法哲学年報2020掲載)
- 那須耕介『法の支配と遵法責務』(勁草書房2020)
- 横濱竜也「麓に下りる:那須耕介『法の支配と遵法責務』」(法哲学年報2020掲載)
- 酒匂一郎『法哲学講義』(成文堂2019)
- 亀本洋「法的安定性は大事、真理は無用」(法哲学年報2019掲載)
- 酒匂一郎「亀本氏の書評に対するリプライ」(法哲学年報2019掲載)
- 森悠一郞『関係の対等性と平等』(弘文堂2019)
- 池田弘乃「平等は自律に依存するか」(法哲学年報2019掲載)
- 森悠一郞「自律規定的な平等というレッサー・イーブル:池田書評への応答」(法哲学年報2019掲載)
- 佐藤遼『法律関係論における権能』(成文堂2018)
- 高橋文彦「どこの国の何の話か?」(法哲学年報2019掲載)
- 佐藤遼「高橋文彦会員の書評への応答」(法哲学年報2020掲載)
- 西迫大祐『感染症と法の社会史:病がつくる社会』(新曜社2018)
- 関良徳「法と統治に向き合う合理的思考とは何か」(法哲学年報2018掲載)
- 西迫大祐「関良徳会員評への応答」(法哲学年報2019掲載)
- 竹下賢『法秩序の効力根拠』(成文堂2016)
- 菅原寧格「要石としての〈竹下法哲学〉」(法哲学年報2018掲載)
- 瀧川裕英『国家の哲学』(東京大学出版会2017)
- 横濱竜也「政治的責務論は何を問うべきなのか」(法哲学年報2018掲載)
- 瀧川裕英「法的状態というユートピア:横濱竜也会員の書評に応答する」(法哲学年報2018掲載)
- 若松良樹(編)『功利主義の逆襲』(ナカニシヤ出版2017)
- 森村進「功利主義は死なず」(法哲学年報2017掲載)
- 若松良樹・児玉聡・米村幸太郎・井上彰「森村進会員へのリプライ」(法哲学年報2017掲載)
- 福原明雄『リバタリアニズムを問いなおす:右派/左派対立の先へ』(ナカニシヤ出版2017)
- 橋本祐子「リバタリアニズムの哲学的基礎の探究」(法哲学年報2017掲載)
- 福原明雄「橋本祐子会員評への応答」(法哲学年報2017掲載)
- 井上彰『正義・平等・責任:平等主義的正義論の新たなる展開』(岩波書店2017)
- 宇佐美誠「平等とはいかなる価値か」(法哲学年報2017掲載)
- 井上彰「概念分析・論敵との真摯な対峙・平等:宇佐美書評への応答」(法哲学年報2018掲載)
- 成原慧 『表現の自由とアーキテクチャ:情報社会における自由と規制の再構成』(勁草書房2016)
- 大屋雄裕「間接化する権力と法」(法哲学年報2016掲載)
- 成原慧 「アーキテクチャ論の行方:大屋雄裕会員への応答」(法哲学年報2016掲載)
- 横濱竜也 『遵法責務論』(勁草書房2016)
- 那須耕介「統治者だけの国家とアイロニーのない遵法責務論」(法哲学年報2016掲載)
- 横濱竜也「遵法責務問題を問うべき根拠・再論:那須書評への応答」(法哲学年報2016掲載)
- 小泉良幸 『個人として尊重:「われら国民」のゆくえ』(勁草書房2016)
- 森村進 「もしドゥオーキンが日本の憲法学者になったら」(法哲学年報2016掲載)
- 小幡清剛 『障害者の〈生〉』(萌書房2016)
- 陶久利彦「障害者解放への途」(法哲学年報2016掲載)
- 小幡(小畑)清剛「陶久利彦教授への応答」(法哲学年報2016掲載)
- 田中成明 『現代裁判を考える:民事裁判のヴィジョンを索めて』(有斐閣2014)
- 高橋文彦「法哲学と「共通の了解事項」:田中成明『現代裁判を考える』」(法哲学年報2015掲載)
- 田中成明「不毛な対比構図(「法の哲学」対「法理の学」)を超えて:大屋雄裕会員と高橋文彦会員の書評への応答」(法哲学年報2016掲載)
- 大塚滋『説き語り 法実証主義』(成文堂2014)
- 高橋広次「改めて「法学」とはどういう学問か?:大塚滋『説き語り 法実証主義』」(法哲学年報2015掲載)
- 大塚滋 「純粋法学の理解に向けて:高橋広次会員への応答」(法哲学年報2015掲載)
- 桂木隆夫 『慈悲と正直の公共哲学:日本における自生的秩序の形成』(慶應義塾大学出版会、2014)
- 濱真一郎「日本の自生的秩序の起源と現代への接合:桂木隆夫『慈悲と正直の公共哲学:日本における自生的秩序の形成』」(法哲学年報2015掲載)
- 桂木隆夫「濱真一郎会員への応答」(法哲学年報2015掲載)
- 毛利康俊 『社会の音響学:ルーマン派システム理論から法現象を見る』(勁草書房2014)
- 青山治城「社会の法:毛利康俊『社会の音響学:ルーマン派システム理論から法現象を見る』を読む」(法哲学年報2015掲載)
-
毛利康俊「N・ルーマンのシステム論を法理論のために拡張するということ:青山治城会員への応答」(法哲学年報2015掲載)
- 大屋雄裕 『自由か、さもなくば幸福か?:21世紀の〈あり得べき社会〉を問う』(筑摩書房2014)
- 松尾陽 「自由な社会を再生するための負担への覚悟:大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か?:21世紀の〈あり得べき社会〉を問う』」(法哲学年報2015掲載)
- 大屋雄裕「松尾陽会員への応答」(法哲学年報2015掲載)
- 戒能通弘 『近代英米法思想の展開:ホッブズ=クック論争からリアリズム法学まで』(ミネルヴァ書房2013)
- 山岡龍一「王政の法と共和政の法」(法哲学年報2014掲載)
- 戒能通弘「近代英米「法」思想史研究の意義:山岡龍一会員への応答」(法哲学年報2015掲載)
- 岡嵜修 『レッセ・フェールとプラグマティズム法学:19世紀アメリカにおける法と社会』(成文堂、2013)
- 戒能通弘「近代アメリカ法思想の時代背景」(法哲学年報2014掲載)
- 岡嵜修 「戒能通弘会員へのお応え」(法哲学年報2015掲載)
- 木原淳 『境界と自由:カント理性法論における主権の成立と政治的なるもの』(成文堂、2012)
- 酒匂一郎「斬新なカント、法哲学か政治哲学か」(法哲学年報2013掲載)
- 木原淳 「酒匂一郎会員への応答」(法哲学年報2014掲載)
- 井上達夫 『世界正義論』(筑摩書房2012)
- 施光恒 「正義理念の力」(法哲学年報2013掲載)
- 井上達夫「世界正義とナショナリズム:施光恒会員への応答」(法哲学年報2014掲載)
- 森村進 『リバタリアンはこう考える』(信山社2013)
- 吉良貴之「リバタリアニズムにおける時間と人格」(法哲学年報2013掲載)
- 森村進 「還元主義的人格観とリバタリアニズム:吉良貴之会員への応答」(法哲学年報2014掲載)
- 伊藤泰 『ゲーム理論と法哲学』(成文堂2012)
- 若松良樹「最良のガイドブック」(法哲学年報2012掲載)
- 伊藤泰 「若松良樹会員への応答」(法哲学年報2013掲載)
- 田中成明 『現代法理学』(有斐閣2011)
- 大屋雄裕「一つの記念碑」(法哲学年報2012掲載)
- 田中成明「不毛な対比構図(「法の哲学」対「法理の学」)を超えて:大屋雄裕会員と高橋文彦会員の書評への応答」(法哲学年報2016掲載)
- 亀本洋 『法哲学』(成文堂2011)
- 毛利康俊「法哲学のセブンスコード」(法哲学年報2011掲載)
- 亀本洋 「放置主義―毛利康俊会員への応答」(法哲学年報2012掲載)
- 嶋津格 『問いとしての〈正しさ〉―法哲学の挑戦』(NTT出版2011)
- 高橋文彦「わからないことほど素朴に考えよう」(法哲学年報2011掲載)
- 嶋津格 「高橋文彦評へのリプライの試み」(法哲学年報2012掲載)
- 小林公 『法哲学』(木鐸社2009)
- 樺島博志「法・論理・計算」(法哲学年報2010掲載)
- 小林公 「人権と黄金律―樺島教授の批判に答えて」(法哲学年報2011掲載)
- 笹倉秀夫 『法思想史講義 上下』(東京大学出版会2007)
- 嶋津格 「発展史観と法思想史」(法哲学年報2009掲載)
- 笹倉秀夫「嶋津格会員の書評への応答」(法哲学年報2010掲載)
- 嶋津格 「笹倉応答へのコメント(replication)」( 千葉大学レポジトリ(1))
- 安藤馨 『統治と功利:功利主義リベラリズムの擁護』(勁草書房2007)
- 森村進 「功利主義政治理論の新しい出発点」(法哲学年報2009掲載)
- 安藤馨 「評者への応答」(法哲学年報2009掲載)
- 山田八千子『自由の法契約理論』(弘文堂2008)
- 鳥澤円 「「合理的信頼」を育む法」(法哲学年報2008掲載)
- 青井秀夫 『法理学概説』(有斐閣2007)
- 酒匂一郎(法哲学年報2007掲載)
- 中村直美 『パターナリズムの研究』(成文堂2007)
- 若松良樹(法哲学年報2007掲載)
(1) 嶋津格(編)千葉大学大学院人文社会科学研究科研究プロジェクト報告書第242集『自由と拘束:社会と法の哲学のために』掲載(出典情報)。
3年前の理事長就任以来私はいくつかの場面で、法哲学内での「相互言及」を推奨する発言をしてきた。ただこれは若干かけ声倒れの感があり、具体策はあまり進んでいなかった。この度それを少しでも形にする方策として、ある理事からの提案に従い理事会で、法哲学年報の中に「論争する法哲学」というコーナーを設けることが決定された。これはある種の書評欄なのだが、それを論争の場として使おう、というアイデアである。私には大変うれしいことなので、若干個人的な思い入れを含めて説明させていただきたい。 (……) 「論争」はもちろん相互批判を中心とする。しかしこれは上記の「足の引っ張り合い」ではない。むしろ、批判される者とする者を、そして読者を、ともに一段高い普遍性のレベルへと導くものでなければならない。その場合の「普遍性のレベル」自体が、元々あるものではなく、知的活動を通して生成するものなのだと思う。そしてこれをうまく生成させてゆくには「高次の打算」も必要だ、というのがこの小文の趣旨である。(……)しかしもっとも重要なのは、言語的に表現されるこの種のリストを長くしてゆくことではなく、実際のパフォーマンスの中で洗練された論争のknow-howを身につけることである。それにはある種の繊細さが要求されており、われわれはこのような機会を通して、それを磨いてゆかねばならないのである。/「論争する法哲学」への投稿その他詳細については、本号の公募情報および日本法哲学会のホームページをご覧
いただければ幸いである。紙面での論争だけでは議論が不足したら、続きをインターネット上で継続する、といった方式もありうる。会員諸兄のアイデアをお寄せいただくとともに、積極的な参加・投稿を期待する次第である。
日本法哲学会理事長・嶋津格(当時)
「論争する法哲学:高次の打算のすすめ」(学会報18号、2008年9月)