学会報第36号

(2017年9月15日発行)

4年間を振り返って

日本法哲学会理事長 亀本洋(明治大学)

理事長になってからの約4年間を振り返ってみますと、一番印象に残っているのは、沖縄大会です。ことに3日目のバス見学がお日柄もよく、参加者全員が和やかな雰囲気で、大変気分のよいものでした。普天間基地を背景に、沖縄国際大学の屋上で、みんなで記念写真をとったシーンが忘れられません。いつかまた、条件が整えば、沖縄で学術大会を開催していただけるとありがたいです。
この間、若い会員が、そして若くない会員も、過去に比べて、法哲学の本を非常に多く出したということも印象深く、まことに喜ばしいことです。今後もこの傾向が続くことを願っております。
40代より若い日本の法哲学者の書く論文や著書を拾い読みしますと、同じ著作について、えらい難しくてついていけないという感想と、自分が若い頃勉強した時代と比べて法哲学は全然進歩していないという感想とを同時に抱くことが多いです。
私自身は、法哲学がなんなのか、いまだよくわかりません。西洋の法哲学の背後には、西洋の哲学とキリスト教と神学ないし法学の伝統とがあります。幸か不幸か、日本の文化には、そのような伝統はありません。西洋の学者たちは、そのような伝統を否定しようと盛んに努力したりしています。
私からみて一番驚くのは、彼らのなかに、そのような伝統が世界のなかではローカルなものにすぎないという自覚がある人が非常に少ないということです。私は、その点が日本の法哲学者のアドヴァンテージだと思っています。私は、西洋からよいものは学び、取り入れるべきであって、まだまだ摂取の程度が足りないと考える近代主義者ですが、これからの日本の法哲学者は、日本の地の利を生かして世界に発信してほしいと願っています。
会員のみなさまのご協力によって、なんとか大過なく理事長を務めることができました。どうもありがとうございました。