2021年度 日本法哲学会奨励賞 (2020年期)

 日本法哲学会は、2021年度日本法哲学会奨励賞を以下の通り決定しました。授賞式は2021年度の学術大会・総会の際に行なわれました。

論文部門

平井 光貴
「法理論に関する当為および「法理論の道徳的正当化要求テーゼ」は可能か」
(『立教法学』第101号、2020年)

学会奨励賞選定委員会の講評

本論文では、英米では理論的知見が積み上げられてきているが、日本では必ずしも十分に扱われてきていない法概念論の一つの領域が正面から取り組まれている。本論文の問いは、「法理論に関する当為は可能か」と「法理論は道徳的に正当化されなければならないか」である。論証の大半は第一の「法理論に関する当為は可能か」の問いに費やされる。著者の結論は、法理論に関する当為は知的当為であり、そうだとすれば、法理論に関する当為は可能だというものである。しかし、本論文内で取り上げられている哲学上の論争は、正当化が可能(または当為)であることは当然の前提とした上で、命題の正当化の定義(必要十分条件)をめぐるものであり、第二の「法理論は道徳的に正当化されなければならないか」の問いにおける当為(「(道徳的に)正当化されなければならない」)にかかわるものではない。本論文で指摘されている通り、そこで知的当為と呼ばれるものも、証拠の探求や信念根拠への着目、確証の比例性等々であって、命題の真理条件にかかわるものではない。これに呼応して、第二の問いに対する著者の答えは、法の定義の真理条件に道徳的正しさが含まれるならば、法理論は道徳的に正当化されなければならないというものである。これは、著者が苦心してたどり着いた知的当為とは無関係な結論である。とはいえ、知的当為についての本論文の緻密な検討は、第二の問いとは結びつかないものの、理論的貢献として一定の評価に値するものといえよう。
また、本論文には、著者の知的格闘の結果、本論文で援用された哲学からは出てこない、オリジナルな、しかもおそらく正しい主張――たとえば「方法論上の争いにおいて問題となっている当為は、……適切な方法を自発的に選択して理論構築を遂行すべきであると〔理論家を〕指導する、熟慮的当為である」――も少なからず含まれている。これらの点は、著者が、自己の直観および疑念とつねに照らし合わせつつ緻密な論証を積み重ねることによって到達した知見として高く評価でき、今後の更なる理論的検討に値する課題であると考えられる。以上の理由から、本論文は学会奨励賞に値するものと評価された。

日本法哲学会奨励賞への推薦のお願い[2021年期] (2020年10月2021年9月分)

 日本法哲学会では、法哲学研究の発展を期し若手研究者の育成をはかるために学会奨励賞を設けています。

2022年度[2021年期]受賞候補作について、次の通り、日本法哲学会会員による推薦を受け付けますので、ご推薦いただきますようお願いいたします。自薦/他薦を問いません。(詳しくは日本法哲学会奨励賞規程をご参照ください。)

対象作品
2020年10月1日から 2021年9月30日までに公刊された法哲学に関する優れた著書または論文(全体として10万字を超える論文は、著書として扱います。)
刊行時の著者年齢が著書45歳まで、論文35歳までのもの


推薦は、左にありますエントリーシートにより、日本法哲学会事務局の推薦受付用アドレス (prize@houtetsugaku.org) までお寄せください。
自薦の場合には、推薦に際し写しで結構ですから作品一部を添付願います。また、他薦の場合であっても、論文については、後日、日本法哲学会事務局から推薦者等に対して、作品1部の提出をお願いすることがあります。

上記の写しは、電子データ(ワープロ原稿など)がお手元にある場合には、それを送信いただいても結構です。ただし、公刊されたものと大幅に内容が変わっている場合には、公刊されたもの(著書、論文抜き刷り)またはそのハードコピーを郵送して下さい。
いずれの場合も、2022年度[2021年期]については2022年1月31日が締切となります。同日中に日本法哲学会事務局に到着するよう、お送りください。
選考結果の発表および受賞者の表彰は2022年度学術大会において行われます。

奨励賞選定委員会委員長 亀本 洋 
       同幹事 山田八千子