2021年度学術大会
法と感情(オンライン開催)

2021年11月20日(土)・21日(日)に北九州市立大学において開催予定であった日本法哲学会2021年度学術大会は、全面的にオンライン開催となりました。

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(登録の受付期間は9月15日~11月16日です。)

学術大会は会員以外の方でも聴講していただけます。2021年度学術大会の聴講を希望される方は、学術大会・総会参加登録フォームにアクセスして必要事項をご記入いただき、送信して下さい。ご記入いただいた電子メールアドレスに参加手順についてのご連絡をさせていただきます。聴講料は1,000円(両日分)です。

統一テーマ「法と感情」 提題趣旨

橋本祐子(龍谷大学)

1.法の淵源としての感情

法と感情は互いに相容れないものと考えられることが多かった。その根底には、理性と感情とを二項対立的に捉えた上で、理性が感情に優位するという理解があったと思われる。法学の世界においても、感情という言葉は、「主観的」、「非合理的」、「偏見」などといった、法の客観性・中立性を損なうものの総称として用いられ、「法は理性的なものが支配する領域であり、感情的なものはそこから排除されるべきである」という考え方が、いまなお根強く存在しているように見受けられる。
他方で、人間の営みを種々の感情の交錯から切り離すことなどできない以上、当然のことながら、法は感情と何らかのかたちで関わらざるを得ない。例えば、刑事法の領域では、犯行時の精神状態が問題となり、民事法の領域においても、被害者の精神的損害への賠償が論じられてきた。すなわち、法は常に人の感情を取り扱ってきたと言えるのである。
本企画では、このように、対立するものとして捉えられることが多いにもかかわらず、不可避的な仕方で相互に絡み合わざるを得ない「法と感情」との関係性に焦点を当てる。はたして、法において感情は、「主観的」で「非合理的」な「偏見」として、忌避されるべき対象に過ぎないのだろうか。法/感情の二
項対立的理解を超えて、法の淵源としての感情の可能性について探求することは十分に可能ではないか。これが本企画を思いつくにいたった問題意識にほかならない。
感情への着目は、心理学、神経科学、哲学、経済学、社会学、歴史学、人類学、政治学などにおいて顕著であり、いまや領域横断的な一つの潮流となっていると言うことができる。法学においてもそれは例外ではなく、1980年代から90年代にかけて「法と感情(law and emotion)」という研究領域が生まれ、いまも発展を続けている。こうした潮流が形成された直接的なきっかけは、神経科学によって感情メカニズムの科学的な解明に向けた研究が大きな進展を見せたことにある。しかしながら、さらにもう一つの背景として、目的や目標の達成のための手段をいかに効率的に見出すかという意味における狭い合理主義の行き過ぎに対する抵抗や拒絶感を挙げることもできるだろう。人間の様々な実践における道理性を見極めるためには、確実性や論理性とは相容れないものとして排除されてきた「感情的なもの」に立ち返る必要があるのではないか。このように、感情への関心の高まりを、狭義の近代合理主義をめぐる精神史の大
な流れの中に位置づけることもできよう。

2.本企画の構成

本企画では、法における感情の役割を様々な仕方で(例えば、法の妥当根拠として、法制度批判の足場として、いわゆる「感情台本」として、法改革の動因として)認めてきた法思想や法学研究を動員しながら、法の淵源としての感情の可能性を探求する(菅原報告:承認説、椎名報告:リアリズム法学、小林報
告:法と文学、池田報告:フェミニズム法理論)。法と感情をめぐる法思想史上の議論蓄積については、関連ワークショップ(「法と感情」をめぐる諸思想)にて集中的に扱われる。さらに、法と感情の関係を考えるにあたっては、歴史学と人類学の知見もその貴重な導きの糸となる。歴史学においては、「感情史」という研究領域が確立されており、とりわけ、政治体制と感情の関係をめぐるその議論からは、法の民主的正統性に関する重要な示唆が得られるものと期待される(小野寺報告)。また、人類学の視座は、法学者が前提とする「法」が存在するということそれ自体の自明性を問い直すものであり、その意味において、人間の行為ルールの形成とそこにおいて感情が果たす役割について、より根源的な次元から示唆がもたらされることが期待される(山崎報告)。以上の報告に対して、住吉雅美会員、中山竜一会員がコメントを行う。
全体シンポジウムでは、法の捉え方をより一層広いものへと転換することを見据えつつ、法の淵源としての感情の可能性について議論を交えたい。

1120日(大会1日目)
[午前の部]
〈個別テーマ報告〉
A分科会》太田寿明・井川昭弘・西村友海・平井光貴
B分科会》本多康作・宮田賢人・北村幸也・高橋秀明

[午後の部]
〈ワークショップ〉
Aワークショップ》
「「法と感情」をめぐる諸思想」
(開催責任者:菅原寧格(北海学園大学))
Bワークショップ》
「スポーツが法に求めるもの:スポーツ法学の可能性」
(開催責任者:野寺巧寛(金沢学院大学))
Cワークショップ》
「感染症の統治を再考する」
(開催責任者:西迫大祐(沖縄国際大学))

〈総会〉


1121日(大会2日目)
〈統一テーマ報告〉
橋本祐子(龍谷大学)
「統一テーマ「法と感情」提題趣旨」
菅原寧格(北海学園大学)
「法感情・承認説・正統性」
小野寺拓也(東京外国語大学)
「感情史研究の射程:ナチ体制における「感情政治」と感情的発話」
椎名智彦(青森中央学院大学)
「リアリズム法学における〈感情〉の意義:法学史的解釈」
小林史明(明治大学)
「「法と文学」から見た感情」
池田弘乃(山形大学)
「フェミニズム法理論と感情:「法外な感情」を手がかりに」
山崎吾郎(大阪大学)
「現代人類学からみた「法と感情」へのアプローチ」
住吉雅美(青山学院大学)
「コメント①」
中山竜一(大阪大学)
「コメント②」

シンポジウム「法と感情」
司会 橋本祐子(龍谷大学)、石山文彦(中央大学)

聴講をご希望の方へ

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事前の申し込みは必要なく、大会当日に会場受付にて申込みの上、聴講料1,000円(両日分)を納めていただきます。なお、学会開催案内(報告要旨集を含む)の配布は会員に限定されておりますので、当ホームページに掲載される報告要旨を、前もってご参照ください。
※2021年度大会は完全オンライン開催のため手続きが変更されています。詳細は同大会のページで確認してください。

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