2007年度学術大会(終了)
法思想史学にとって近代とは何か

日 程:2007年11月10日(土)・11日(日)
場 所:同志社大学 寒梅館

本統一テーマの趣旨

大会委員長 桜井 徹

 法思想史をテーマとする本シンポジウムは、各報告の守備範囲としては、トマス・アクィナスからナチズムにまで及ぶヨーロッパ思想史の諸側面をとりあげつつも、これらの報告を結びとめる共通要素として「近代」という概念を設定し、様々な考察対象をもつ法思想史学がこの思想運動をいかにとらえてきたかを、報告者に課題として共有してもらうことを試みる。そうするのは、本学会の近年の統一テーマである「法の支配」やリバタリアニズムを例に挙げるまでもなく、今日の法哲学の営みそのものが、近代の思想運動の多様な所産の「問い直し」と「再認識」の不断の試みにほかならないと思うからである。
 私たちは、多彩な時代・思想家を切り口として、近代がいかなる思想とエートスを生み落とし育んできたかを再検討することを通じて、「私たちはどこから来たのか」を確認し、また「私たちは今どこに立っているのか」を知るための貴重な手がかりを得られるのではあるまいか。今回、各報告の直接の対象はヨーロッパの法思想に限定されることになったが、その際にも各報告は、それぞれの思想が「ここ」にいる「私たち」自身にいかなる示唆を与えるのかを念頭に置きつつ行われることになろう。

 パネリスト報告の全体的布置としては、まず中世から近代への移行のプロセスに関し、トマスの法思想を基点に近代を問い直そうとする河見報告、中世の世界観・人間観の突破口としてのオッカムのノミナリズムがもつ意義を検討する小林報告とを、第一のグループと考えることができよう。
 次いで、ヨーロッパ各国における代表的な近代法思想を扱うグループとして、近代自然法学の世俗的変容を完遂したヒュームの業績を再評価しようとする下川報告、ルソーを中心とする近代フランス法思想の特徴を論ずる神原報告、カントにおける自由の普遍的共存という統制的理念に着目した高橋報告、ベンサムの法理論の近代的意義を再検討する戒能報告を、第二のグループとみなすことができる。
 さらに、ヘーゲルの『法哲学要綱』の中に近代自然法学および社会契約説に対する根本的な批判を見てとる永尾報告、ドイツ歴史法学それ自身のうちに近代と反近代とが同居していた点に注目する堅田報告、反近代を標榜すると同時に近代の技術的理性の貫徹という性格をも備えるナチズムを、ハイデッガーを手がかりに分析する南報告が、第三のグループを構成するといえる。
 最後に、笹倉会員にはコメンテーターの役割をお引き受けいただいているが、その際、それぞれの報告についての批判というよりも、むしろ、本シンポのテーマをめぐる報告相互間での矛盾点や論争点を浮き彫りにして、パネリスト間での論争に火をつけることに主眼を置いてくださるようお願いしている。

 なお、パネリスト各位には、可能なかぎり報告の際に他のパネリスト報告の主題についても意識し、場合によっては明示的に論及していただけないか、と依頼している。そして、その際には、思想家の細かい解釈に立ち入るというより、「近代とは何か」というシンポ・テーマの中核に触れるような内容の論及をしてほしいとお願いしている。このことによって、パネル・ディスカッションにおいては、シンポジウムの主旨に沿った各パネリスト間の活発なクロス・トークが喚起されるのではないかと期待される。

第1日(11月10日) 午後の部  (13時30分〜17時50分)
桜井 徹(神戸大学)
 「統一テーマ「法思想史学にとって近代とは何か」について」
河見 誠(青山学院女子短期大学)
 「トマス法思想におけるヒューマニズムと理性の自律」(仮題)
小林 公(立教大学)
 「ウィリアム・オッカムのノミナリズムと自然権概念の展開」(仮題)
下川 潔(学習院大学)
 「ヒュームと近代自然法学の変容——近代所有権論とそのエピクロス的転回」
神原和宏(久留米大学)
 「ルソーの共和主義解釈——近代フランス法思想における位置づけ」(仮題)
高橋洋城(駒澤大学)
 「理念の論法と近代的秩序——カントとその影響圏から」(仮題)
戒能通弘(同志社大学)
 「ベンサムの法実証主義、功利主義と近代」

第2日(11月11日) 午前の部  (9時50分〜12時00分)
永尾孝雄(熊本県立大学)
 「ヘーゲルと近代自然法学」(仮題)
堅田 剛(獨協大学)
 「サヴィニーとグリムの歴史法学——法の言葉・詩の言葉」(仮題)
南 利明(静岡大学)
 「ナチズムと世界像の時代」(仮題)
笹倉秀夫(早稲田大学)  コメント

第2日午後の部  (14時00分〜17時00分)
【パネル・ディスカッション】「法思想史学にとって近代とは何か」をめぐって
司会:桜井 徹(神戸大学)・高橋文彦(明治学院大学)

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