2018年度学術大会
法多元主義―グローバル化の中の法

日 程:2018年11月10日(土)・11日(日)
場 所:東京大学本郷キャンパス

統一テーマ企画「法多元主義」 提題趣旨

浅野有紀(同志社大学)

1.法多元主義の現状

 グローバル化は、国境を越えた活動を促進する。従来は国境の枠内で考えられていた問題の多くが、国境を超えた要素を持つに至っている。環境、経済、雇用、犯罪、インターネット、様々な科学技術などが、国境を越えて人々の生活に影響を及ぼすようになっている。
 このように、人々の活動や生活の状況が変化する時、法もまたその姿を変化させるのではないだろうか。社会の変化は、法の変化を促す。それでは、グローバル化は法にどのような変化をもたらす可能性があるのだろうか。
 グローバル化における法の変容を描写するための理論として、法多元主義が挙げられる。法多元主義は、法を国家法と非国家法の併存という視点から分析し、両者を包含可能な法理論を探究する。もともとは、中世におけるカノン法や商人法などの非国家法の在り方に関する法思想史的考察や、植民地における宗主国法と固有法の関係の分析として論じられてきた法多元主義は、グローバル化に伴う国家の役割の限界及び変化に対応する理論として、近年注目されている。グローバル化は、特定の土地とは関連しない活動領域において形成される非国家法の余地を増大させている。商取引にかかわるレークス・メルカトーリアや、国際金融における自主規制、戦争や災害による傷病者救護活動に関わる赤十字や国境なき医師団の組織・活動規定、インターネットのドメインとIPアドレスを管理するICANNの規定するルール、国際オリンピック委員会の組織・活動規定に代表されるスポーツ法、環境マネージメントに関するISO14000の国際規格や、遺伝子治療に関するUNESCOの「ヒトゲノムと人権に関する世界宣言」、世界医師会のヘルシンキ宣言などの、枚挙にいとまのない非国家法(の例とされるもの)が、国家法の適用範囲外で、また国家法と併存しつつ、また国家法に組み込まれながら、その存在感を強めている。また、これらの法が適用される制度として、様々な仲裁機構や自主的紛争解決手続きも存在するに至っている。

2.大会の構成

 法多元主義における非国家法の理論は、多様な観点から論じられる。まず、非国家法の基礎を私的自治や、何らかの形の合意や自主規制に求める観点がある。私法や経済の分野ではこのような非国家的規範がグローバルに展開しつつある。次に、法の非国家法化の起源を、従来から展開している法の行政化に見出そうとする観点がある。専門知識や技術的な問題処理技法に基づき、民主的議会による討議とは異なったルートで人々の行為規範が形成される事態がグローバルに拡がっている。法の普遍的基礎とみなされることもある人権についても、その非国家性が指摘され得る。また、法の多元的併存を扱ってきた国際私法においては、非国家法の登場による議論の再構成がみられる。そして何よりも、こうした国家法と非国家法の混在の実態を、従来、統一的で階層的な国家法を中心に論じてきた法理論がどのように受け止めるか、そもそも法とは何かと問う法哲学の観点がある。大会においては、各分野の多彩な論者を迎え、法哲学の舞台で大いに議論を交えたい。

1110日(大会1日目)
[午前の部]
〈個別テーマ報告〉
A分科会》松田和樹・西迫大祐・菊地諒・松田恵美子
B分科会》田畑真一・永石尚也・古澤美映・折橋洋介

[午後の部]
〈ワークショップ〉
Aワークショップ》
「動物権利論の展開」
(開催責任者:浅野幸治(豊田工業大学))
Bワークショップ》
「法多元主義と近代アメリカ法、法思想」
(開催責任者:戒能通弘(同志社大学))
Cワークショップ》
「移民正義論の今日的課題――移民の社会統合と「デモス」の範囲」
(開催責任者:横濱竜也(静岡大学))

〈総会〉
[懇親会]

1111日(大会2日目)
〈統一テーマ報告〉
浅野有紀(同志社大学)
「統一テーマ企画「法多元主義―グローバル化の中の法」提題趣旨」
原田大樹(京都大学)
「行政法学からみた法多元主義」
松尾陽(名古屋大学)
「グローバル・ガバナンスにおける多元的な秩序形成の在り方とその意義―原田報告へのコメント」
小塚荘一郎(学習院大学)
「私法・金融法における法多元主義」
山田八千子(中央大学)
「「法多元主義」における私的規範生成の在り方―小塚報告へのコメント―」
郭舜(早稲田大学)
「法多元主義という問い―国際法からの眺め」
江島晶子(明治大学)
「法多元主義と国際人権保障(国際人権法からのコメント)―人権保障における多元的・非階層的・循環的システム構築の可能性―」
近藤圭介(京都大学)
「グローバル法多元主義と「法の衝突」の問題(仮)」
西谷祐子(京都大学)
「近藤圭介先生のご報告に対するコメント」
長谷川晃(北海道大学)
「総括コメント」

シンポジウム「法多元主義―グローバル化の中の法」
司会 浅野有紀(同志社大学)、濱真一郎(同志社大学)

聴講をご希望の方へ

学術大会は会員以外の方でも聴講していただけます。

事前の申し込みは必要なく、大会当日に会場受付にて申込みの上、聴講料1,000円(両日分)を納めていただきます。なお、学会開催案内(報告要旨集を含む)の配布は会員に限定されておりますので、当ホームページに掲載される報告要旨を、前もってご参照ください。

ページの先頭へ